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JCKLニュースレター
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今月の写真<『FRIM』FOREST SKYWALK>
今月の表紙は、特集『FRIM』のFOREST SKYWALKからの写真である(スカイウォークの詳細は後述の特集にて)。
『FRIM』には「エントランス1」と「エントランス2」がある。エントランス1は、ガイド付きのネイチャートレッキングの入り口、エントランス2はケポン植物園(ボタニックガーデン)の入り口である。スカイウォークは植物園内にあるのでエントランス2から向かうことになる。この2つの入り口はけっこう離れていて移動する場合は車が必要である。事前に目的の場所の確認を忘れないことが大切だ。それだけ『FRIM』の敷地面積は広大である。公式サイトによると、約545ha、東京ディズニーランドの約10倍。この敷地の大部分は植林や森林再生エリア、研究林であるが、ケポン植物園、トレイル、研究施設も含まれている。
植物園内では、スカイウォークだけでなく、食虫植物園やジンジャー園、バンブー園等、散策路に沿ってエリアごとに見る屋外の庭園コーナーがある。トレイルも整備されており、ジョギングやウォーキング、バードウォッチング、湖と水辺の風景も楽しめる。カフェも併設されており、憩いの場として利用されている。とは言え、炎天下での移動になるので、水分補給、日焼け対策、また急な天候変化対策、虫よけ、双眼鏡なども用意するとよい。
植物園散策だけなら1~2時間で回れるが、リラクゼーションなら半日程度が望ましい。KL市内から車で約30分という行きやすい場所に位置し、KL郊外の自然が豊かでのんびりできる絶好の場所と言えるだろう。

FRIM(Forest Research Institute Malaysia/マレーシア森林研究所)
2025年 ユネスコ世界遺産に登録されました!
FRIM(マレーシア森林研究所)— 世界遺産としての価値
2025年7月、FRIM(マレーシア森林研究所)は、マレーシアで6番目のユネスコ世界遺産に登録されました。
注目すべきは、FRIMが森林研究所でありながら、「文化的景観」として世界遺産に登録されたことです。
世界遺産として評価された5つのポイント
- 歴史的建物と文化的景観の保存
1920年代後半、イギリス植民地時代に建てられた建物や、計画的に整備された文化的景観が現在まで良好に保存されている。 - 植林の先駆けとなった事例
FRIMは、かつて荒廃していた錫の採鉱地を再生させ、世界でも最初期の熱帯雨林植林のモデルとして実践を重ねてきた。100年にわたる植林と森林管理の歴史は、熱帯地域の持続可能な土地利用の先駆例とされている。 - 一貫した管理とコミュニティの継続
創設以来、FRIMは同一組織によって管理されており、現在も約100〜200世帯の常駐スタッフとその家族が敷地内に暮らしている。研究機関と生活の場が共存する独自の構造は、文化的景観として高く評価されている。 - 人工林でありながら自然の再現
FRIMは人工的に造成された森林であるにもかかわらず、現在では熱帯雨林特有の生態系や構造が明確に形成されており、自然林と区別がつかないほどの成熟した森林景観が広がっている。 - 持続可能な管理体制
FRIMは、保存管理計画(Conservation Management Plan, CMP)に基づき、自然環境と文化遺産の両立を図るための持続可能な管理を実施。研究、保全、教育、観光の各分野において、整合性のある方針とガイドラインが適用されている。

FRIM 広報担当者に聞きました!
A. 今回の発表は私たちに大きな喜びをもたらし、上級職員にとっては数十年にわたる献身的な努力の集大成となりました。若い研究者にとっては、遺産を未来に引き継ぐためのモチベーションとなりました。
A. FRIMの国際的な知名度が向上し、より多くの研究協力の機会が生まれました。また、エコヘリテージに関心のある観光客を誘致でき、観光セクターにも貢献しています。
A. 錫鉱山跡地に熱帯雨林の景観を再現した例の中でも、とても大きなスケール且つ最も早く再生させた成功例の一つとして抜きん出ていました。荒れ地を豊かな生物多様性を育む成熟した森林へと変貌させたのです。科学、文化、生態系がこれほどバランスよく融合したプロジェクトは他に見られません。
A. FRIMの研究は5つの主要分野に分かれ、300名を超える研究者が熱帯林業の異なる側面に焦点を当て活動しています。
- 林業・環境部門
森林の再生、再生可能資源と炭素貯蔵量の評価、生態系健全性指数の向上、都市林の管理など - 森林生物多様性部門
種と生息地の長期モニタリングを通じて生物多様性と生態系を保全し、森林資源の持続可能性を確保 - 林産物部門
アブラヤシの幹など新しい木材の開発、加工木材の生産、燃料製品(木質チップ等)の開発など - 天然資源部門
薬草やハーブの真正性の確認と記録、希少植物の保全、精油や健康食品、化粧品の開発など - 森林バイオテクノロジー部門
DNAバーコーディング、微生物・植物成分の研究、バイオ製品の開発
代表的なプロジェクト
・ゴムの木を活用したマレーシアの家具づくり
・気候変動研究
・国生植物の記録、トンカットアリなどのハーブ製品の認証
・高性能木材製品の開発
これらの取り組みは、FRIMが森林科学、生物多様性保全、持続可能な製品開発における世界的なモデルとしての役割を担っていることを示しています。
A. その道のりは長く複雑なものでした。暫定リストに掲載されたのは2017年で、必要書類を作成して2024年初めに提出した後、ICOMOS(イコモス:国際記念物遺跡会議)による評価が行われ、その後パリで技術協議が行われました。
最大の課題は、100年にわたる生態学的、歴史的、文化的証拠を、ユネスコの厳格な基準を満たした形で、説得力をもたせてまとめることでした。
A. 地域レベルでは、引き続きトレッキングガイドなどのエコ教育プログラムを通じて、一般の方々への啓発活動を行っていきます。また、学校、地域社会、エコツーリズムのパートナーへのアプローチを強化し、マレーシアの森林への理解を深めてもらいたいと思います。
また、科学的研究を推進し、その成果を地域・国際レベルで共有していきます。同様の課題に直面している国々のモデルとなるよう、世界中の関係機関と連携していくことを目指しています。
FRIM管理棟/Admin building (1929) FRIM提供
1920年代の野菜畑が広がる丘の斜面/Hill slope of vegetable farm (1920‘s) FRIM提供
FRIMオフィス現在の姿(1929年建設)
ネイチャートレッキングツアー
FRIMへの入場について
FRIMへの入場は、完全予約制のガイド付きツアー(Trekking at Nature Trails)に参加することで可能であり、自由に立ち入ることはできない。これは、FRIMの遺産的価値を保護しつつ、来場者にその魅力を最大限に伝えるための管理体制である。
地図上で「FRIM」を検索すると複数の入り口が表示されるが、ガイド付きツアーに参加する場合はエントランス1(FRIM Visitor Information Centreへ通じる入り口)から入場する。
一方、エントランス2はスカイウォークを含むケポン・ボタニックガーデンの入り口であり、両者は徒歩圏内にないため、間違えないよう注意が必要である。
ネイチャートレッキングツアー(Trekking at Nature Trails)
FRIMの世界遺産としての魅力を知るには、ガイド付きツアーに参加することが不可欠。
今回参加したネイチャートレッキングツアーは、英語で行われたが、豊富な知識をもったガイドさんが、森林や文化的景観の散策を通じて、FRIMの生物多様性、歴史、修復科学に関する説明を与えてくれた。参加者が疑問に思ったことにも丁寧にわかりやすい英語で答えてくれ、多くの新しい学びを得られる充実したツアーとなった。通常、ツアーにかかる時間は2時間前後だとのことだ。
準備するもの
KLからほど近く、比較的平坦な人工林の中を歩くため、体力に自信がない方や子どもも、安全にマレーシアの熱帯林を体験できる。動きやすい服装・運動靴の装備で十分であるが、虫よけ・日焼け対策をして臨みたい。
価格:1グループ(最大10名)RM150
ロケーション:FRIM(FRIM Visitor Information Centre)
市内からの距離:KLセントラル駅から車で約30分
予約:frim_enquiry@frim.gov.my
「FRIM Visitor Information Centre」宛てにメールで予約。「Trekking at Nature Trails」に参加希望の旨を伝える。詳細は公式サイトを参照。 https://www.frim.gov.my/
注意事項:入場は完全予約制
FRIMのあゆみ
1. FRIM設立の経緯
マレーシアは世界有数の熱帯雨林地帯で、多様な生態系が形づくられてきた。しかし、19世紀後半になると産業革命の影響を受け、錫鉱山での採掘やゴムプランテーションの開発が進み、熱帯雨林の環境は著しく損なわれてしまった。
森林資源の枯渇への危機感から、英国領マラヤは1926年にマラヤの森林資源の科学的管理、持続的利用のための研究機関「FRIM」を設立。
ケポン一帯は1870~80年代に錫の採掘が開始されており、FRIM設立当時すでに鉱山は閉山し、500ha以上の広大で荒廃した土地となっていたことから、再び森を育てる「実験場」としてケポンが選ばれた。
2. FRIMの最初の研究:「木材を使った鉄道枕木」
FRIMが正式に設立される以前、鉄道枕木に適した木材の耐久性が試験されていた。この研究はゴムや錫を輸送するための鉄道を拡張するためで、これにより体系的な林業研究の基盤を築かれ、1926年のFRIM設立につながった。
3. ビジョンの変化
- 1926年 設立時
植林技術の確立、樹種の選定、熱帯林の回復方法、森林経済学・政策等を行う拠点 - 1957年 マラヤ独立後
マレーシア政府の国家機関として体制が整備され、持続可能な森林管理、生態系保全、地域福祉の向上等にシフトし、国内の林業政策や法律立案に貢献 - 1985年 独立行政機関として再編成
独自の予算、研究計画を持つ機関に昇格し、総合的な森林、環境科学機関に進化
・研究分野の拡大と高度化
・国連やJICA、ユネスコ等との共同プロジェクト実施
・ASEAN各国との森林政策に関する連携
・日本との連携:JICAによる技術支援、日本の大学(京都大、名古屋大)や研修機関(森林総合研究所)との共同プロジェクト、人材育成や研究交流、製材・木材産業分野での民間協力などがある。
枕木に適した木材の実験(レプリカ)
試験用にナンバリングされた樹木4. ユネスコ世界遺産登録
敷地面積500haを超える広大なFRIMには、大きな木々がたくさん生い茂っているが、それらは人の手で植えられたもので、世界最大級の最も古い人工林である。
この一帯は「Green Lung of KL」と呼ばれ、人々の憩いの場にもなっている。
まっすぐ高く伸びる木
層を形成する木々
これらのほとんどの木は1926年頃から植えられている。
小さい木は大きな木から種が落ちて育ったものかもしれないし、隣の森から動物が実を運んできてここに落としたものかもしれない。

FRIM 広報担当者に聞きました!
A. ここは最も深刻な荒廃地の一つであり、「死んだ」と思われた土地でさえ綿密な計画によって再生できることを科学的に証明する理想的な実験場と判断されたからです。
A. まず坑道を排水し、地面を均すことから始まりました。初期の取り組みは、在来種と外来種の両方の森林樹種の試験植栽に重点が置かれ、荒廃した土壌における生存率と適応性を研究し、マメ科の養生樹を導入することで好ましい環境を作り出すことが判明しました。これらの初期の実験は熱帯林再生の科学的基礎を築きました。
A. はい。1920年代、無秩序な錫鉱山とゴム農園の拡大によって引き起こされた急速な森林破壊を政府は深く懸念していました。KL周辺の多くの土地、特にケポンは長年の鉱山開発によって不毛で砂地となり、生産性が低かったのです。体系的な森林再生の先駆的な取り組みの始まりとなりました。
A. 当初、マラヤでの錫採掘は伝統的な手作業で行われていました。手作業であっても土地を傷付けましたが、機械採掘のように深刻なダメージを残し、再生能力を完全に破壊したわけではありませんでした。採掘跡、砂質土壌、不均一な地形は残りましたが、植林や科学的な森林再生を支えることができました。
A. 50年後には自然林に似た状態になり、100年近く経った現在、FRIMは生物多様性に富み、自然林に匹敵する機能的な熱帯雨林生態系を取り戻しました。
A. はい、本当です。史料によると、クスノキ(Cinnamomum camphora)は日本占領時代に植えられたことが確認されています。
クスノキ、日本占領時代を示すものとして残されている
セミ デタッチド ハウス(長屋形式住宅)1930年代初頭建設
ヴィラアロマティカ、1927年研究所所長公邸として建設
FRIMネイチャートレッキング
この森林には60種類以上の哺乳類、80種類以上の爬虫類、鳥類は230種類以上が生息している。
枝と枝が重ならないクラウンシャイネス現象を示すKapurの木
Kapurの木の花、キンモクセイに似た香り
木の枝に着生しているシダ
ハリナシバチの巣、チューブのような形状
ツタは小動物がツタを使って地面に下りず移動できるバイパスの役目を果たす
ビルマ(ミャンマー)の竹
アンブレラの葉、小屋の屋根になることもあるとのこと
クラウンシャイネス現象(Crown Shyness)
森林の樹冠が接触せず、木々の間にジグザグとした網目状の空間ができる現象。FRIMのみどころの一つ。
FRIM内では、Kapurを含む3種類の木でクラウンシャイネス現象が見られるとのことだ。隣接する木の枝が物理的に触れ合い、その部分が折れることによってモザイク状の隙間が生じる、とガイドさんから説明を受けた。実際、木の下には細い枝がたくさん落ちていた。
参加者の一人は、木が枝先が触れ合わないように自ら調整して伸びない現象だと思い込んでいたため、意外だった。しかし、木々がこのように成長する正確な原因は、複数の要因が関わっており、実際には未だ完全には解明されていないという。
FRIMスカイウォーク
今月の表紙にも紹介された『スカイウォーク』は、マレーシア森林研究所(FRIM)ケポンボタニックガーデン(KBG)内にあり、2020年8月31日に開業された。
熱帯雨林の上空を歩くこのアトラクションは、高さ18mから50mまで変化する11の塔(うち9つは展望可能)と8つの橋梁で構成され、総延長は250m。鋼管と鋼ケーブルで補強されたアルミ製の足場を用いて建設されているので、今は使用不可になっている以前の古いキャノピーウォークに比べて安定感がある。階段もマレーシアには珍しく次の踊り場までの段数がすべて一定に統一され、ちょっと感動。次の踊り場まで一人ずつ上がるシステムで、橋梁を渡る人数も制限されている。一周するのに30分位要し、一方通行なので引き返すことはできないが、ショートカットは可能なので、高所恐怖症の人も大丈夫。
高さ50mの最終地点(別料金)には、マレーシア国旗がはためき、眺めは実に気持ちよく、360度のパノラマビューも楽しめる。北側と東側には人工林の豊かな緑が広がり、西側にはテーマパークのような美しい木々やKBG池が広がる。また天気がよければ南側に高層ビルが立ち並ぶクアラルンプール市街が見られる。スカイウォーク自体には心地よい風があり、思いの外汗はかかない。
入場料はマレーシア人と外国人で料金は異なる。オンラインでの事前予約制で、7歳以上、50mの展望塔へは13歳以上の入場規定がある。スカイウォーク入り口まではしっかり太陽を浴びるので、涼しい朝の時間帯の予約がおすすめである。
予約サイト: https://skywalk.frim.gov.my/ticket.cfm
※ボタニックガーデンの入場料
外国人:大人 RM5/17歳以下 RM1
マレーシア人:RM1(12歳以下は無料)
駐車料金 RM5/台
※スカイウォーク入場料 (7歳未満入場不可)
外国人:大人 RM40/子供 RM25 (7-17歳)
マレーシア人:大人 RM15/子供 RM8
50mタワーの追加料金(13歳以上のみ可)
外国人 RM10/マレーシア人 RM5
ジャングルの中のスカイブリッジ
最高峰高さ50mの塔の上にはマレーシア国旗
塔と塔をつなぐ揺れない頑丈なブリッジ
サンダル禁止
スカイウォーク全体イメージ図
最高峰から見えるKL市街

料理講習会講師 ちはる

カリッと揚がったチキンに、甘酸っぱいレモンソースを絡める中華料理「レモンチキン(檸檬鶏)」。レモンに含まれるクエン酸には肉を柔らかくする効果があり、食べごたえ抜群なのにさっぱりとしている人気メニューです。
ここで紹介するレシピでは、ローカル製品の「カスタードパウダー」を使います。水と砂糖を加えるだけで簡単にカスタードクリームが作れる優れもので、これをほんの少し加えることで風味と色味が良くなります。
残ったカスタードパウダーはデザート作りにも使えます。水の代わりに牛乳や豆乳を使えば、風味がぐんとアップします。
🍳 材料 2人分
チキン(胸肉) 300g
卵 1/2個
酒 小さじ 1/2
タピオカパウダー* 小さじ2
カスタードパウダー* 小さじ1
塩 小さじ 1/2
黒胡椒 適量
チキンの揚げ粉
タピオカパウダー* 大さじ5
カスタードパウダー* 大さじ3
レモンソース
水 100ml
レモン汁 1/2個分
レモンの皮 1/4個分
アップルビネガー 大さじ2
カスタードパウダー* 小さじ1
はちみつ 小さじ1
塩 小さじ1/5
砂糖 大さじ2
*タピオカパウダー
Tapioca Starch RM2/500g
揚げ物の衣に使うと外側はカラッと、内側はジューシーに仕上がる
*カスタードパウダー
Custard Powder RM3/300g
水と砂糖を加えるだけで簡単にカスタードクリームが作れるパウダーで、料理にも使える
🍳 作り方
①レモンの皮のワックスや農薬が気になる場合は、重曹大さじ1を入れた水に5分浸け、すすいでから使う
②ここで使うのはレモン果汁1/2個分、皮1/4個分
③果肉は絞り、皮は細切りにする
④チキンは皮を剥いで薄切りにし、包丁の背で叩いて調味料を染み込みやすくする
⑤チキンに溶いた卵と粉類、調味料を入れ混ぜる
⑥15分以上漬け込む
⑦揚げ粉をまぶし、揚げ焼きにする
⑧食感を良くするため、二度揚げにするとなお良い
⑨レモンソースの材料を火にかけ、沸騰させる
⑩水溶き片栗粉(分量外)を少量加え、再沸騰させたらソースの完成
⑪チキンを皿に盛り付け、レモンソースをかける
今月の漢方
<一夜の白髪>
国際中医薬膳師、中国黒龍江中医薬大学中医学学士 坪井良和

フランス革命で知られるマリー・アントワネットは、処刑の前夜、髪が一夜にして真っ白になったという伝説がある。短期間で白髪になる現象は「マリー・アントワネット症候群」とも呼ばれるが、現代科学では一晩で髪が白くなることはないとされている。実際には、強いストレスによって有色毛が抜け落ち、その下の白髪が目立つことで白く見える事象らしい。ただ、マウスを用いた研究では、継続するストレスによってメラニン色素を作る細胞が急速に減少する可能性も示されているので、囚われのマリー・アントワネットの髪はかなり傷み、色も白くなっていたことであろう。極度の恐怖や強いストレスが髪に影響を与える現象は洋の東西を問わず報告されており、精神的あるいは栄養学的に厳しい状況下で髪が白くなることは、古来、身近な症状であったと考えられる。
中医学では「髪は血の余り」といわれ、髪の健康は血の状態や腎の働きと深く関わるとされる。年齢とともに髪が薄くなるのは、腎気が減少し、血の巡りが悪くなり、髪や毛根に栄養が行き届かなくなるためである。一方で若白髪は、目の酷使や夜更かしなどによって肝の血を貯める機能が弱まることにも起因する。女性が産後に抜け毛に悩まされるのも、出産で大量に血を消費したためである。そのため、育毛や白髪・抜け毛の予防には、血を補う生薬がよく用いられ、代表的には乾燥させた桑の実(桑椹子:そうしんし)、ロバの皮を煮詰めて固めた阿膠(アキョウ)、地黄(ジオウ)など黒い生薬がよく用いられる。家庭では、クコの実、レバー、黒ゴマ、マルベリーなど、腎に良い黒い食材は腎の老化を遅らせる働きがあるとされ、積極的に摂るとよいのである。
昼夜逆転の生活や、ブルーライトによる目の疲れも髪には大敵
阿膠:非常に高価で、動物臭が強い。そのため、少量を煎じ薬で溶かしたり、ほかの生薬と煮だしてシロップにして服用する
阿膠糕:ゴマやナツメ、クルミなどを阿膠とはちみつなどで練り合わせてキャラメル状にしたものも人気
長期的なストレスから解放されたのを機に、白髪や抜け毛が改善する事例もあるが、年齢による髪の変化を若い頃の黒髪や毛量に戻すことはできない。人間が誕生する際に新しい命を生み出すために不可欠な腎気は、成長期には肺や脾から取り入れた新鮮な空気や食物の栄養を糧にピークを迎え、やがて徐々に衰えていき、それは髪の状態、足腰や聴覚の衰えといった形で表れてくる。腎の老化を遅らせる作用を持つ食物を取りつつ、ストレスのない生活を送ることで、髪の健康を守り、老化の進行を少しでも抑えることができるのである。

余談ではあるが、マリー・アントワネットの白髪以外の例として、中国の周興嗣の話がある。彼は、仕えていた皇帝から、皇子の学習用として、1000文字すべて異なる文字で書かれた教材を作るよう命じられた。周興嗣は皇帝の命を受け、わずか一晩で整然たる詩文を編み出し、皇帝に進上することができたものの、その労苦によって頭髪は一夜で真っ白になってしまったという。彼の作った「千字文」は初学者を対象とする習字・書道の手本となり、漢字習得用の教材として日本でも奈良時代から長く教科書として用いられた。周興嗣の白髪は、現代にも通じる、なんとも哀しい話であると思うのは私だけだろうか。
第46回マレーシア全日本人会連絡会及び第44回在マレーシア安全対策連絡協議会の開催
(10月3日開催、主催:クアラルンプール日本人会、場所:クアラルンプール日本人会会館会議室)
- 大使館関係者及び半島側6地区から6つの日本人会の代表が集まり、表記会議が開催された。(今回も東マレーシアの6つの日本人会は欠席)この会議は毎年10月の第1金曜日に開催され、各日本人会の会員動向、運営課題、イベント・地域貢献、日本人墓地、子弟教育等の情報共有と意見交換を行うもの。
- 会員数動向は全体的に減少傾向に多少ブレーキがかかった状況で、前年比で微増、微減、増減無しと会によって若干の違いはあるものの、おしなべて大きな変更は無かった。
- イベントの実施状況についても、コロナ前のレベル迄とはいかないまでも、多くの会で会員親睦を目的とした各種イベントが活発に開催される様になりつつあり、また次年度も開催予定とのこと。
- また会員数の増加、会の収益改善を図るために、会の魅力アップにつながる活動、例えば新しいイベントの開催や市中の店舗で受けられる値引きなどの会員特典の増強に積極的に取り組んでいる会もある。
- 大使館からは①今年旅券が大きく変わって国立印刷局のみでしか作成できなくなったことから、オンラインであろうと紙での申請であろうと、申請から取得まで2~4週間程度かかることのお知らせ、②海外赴任に際しての在留届の提出と在外選挙人名簿への登録のお願い、③マイナンバーカードが出国前に申請すれば国外継続利用が可能になることの説明、④2024年10月1日現在のマレーシアの在留邦人数が20,025人であったとの情報共有があった。
- 安全対策連絡協議会では、各地区より防犯・安全に関する報告があったが、ペナンで邦人が為替交換所で詐欺被害にあったこと以外は治安面で目立った事故や事件等の報告は無かった。
- 大使館からは、連絡事項としてHPの領事情報リニューアルのお知らせ、詐欺・すり・ひったくり等の犯罪やパスポート紛失事案増加への注意喚起があった。特に詐欺事件は最近急激に増加しており、不審な電話やメール、投資話やネットショッピングには十分注意が必要であること、また今年5月には、日本国内をターゲットにした特殊詐欺事件の一斉捜査があり、KL近辺で邦人13名を含む詐欺グループ19名が逮捕されたことの情報共有があった。
- また一般情勢としてマレーシア治安統計、交通事故統計などの情報共有があった。
会員同士の親睦会として企画された「秋の懇親会」が10月18日(土)の夕刻から会館の屋上で開催されました。
日本の秋を感じるお料理をJCKLテナントの日馬和里レストランに調理してもらい、100名を超える参加者の皆さんに味わっていただきました。今回も生ビールの飲み放題や焼き魚、おでん、秋のフルーツなどが用意され、参加者同士の話も弾む楽しい会となりました。会館テナントのクーポン券が当たるラッキードローも大変盛り上がりました。
今回もキリンビール様のご厚意により、生ビール飲み放題が実現し、75リットルのキリン一番搾りを無償でご提供いただきました。会場にはビールサーバーが設置され、ほどよく冷えた生ビールを存分に楽しんでいただくことができました。この場をお借りして、キリンビール様に心から厚く御礼申し上げます。
キリンのスタッフがビールサーバーから注いでくれます
今年は急きょ秋刀魚が入荷でき、塩焼きに
鶏の唐揚げ、色鮮やかなニラ卵焼き、筑前煮
海老の旨味が詰まった揚げせんべいと枝豆
牧野企画広報委員長の挨拶と乾杯
さつまいも、南瓜、海老の天ぷら
きのこたっぷり!炊き込みご飯
秋のフルーツ♪柿、梨、ぶどう
今年で4回目の参加となった有山さん(右)と最近入会された木野内さん
「今日は樽出しの一番搾りや炭火での焼き魚をじっくり味わいたいと思います。その後、ラッキードロー1等賞も大当たり! 二人で山分けさせていただきました。」
和泉さんファミリー
「マレーシアに赴任して7年になります。このイベントは2回目の参加です。今日は生ビールや焼き魚を楽しみにきました。今回は急遽秋刀魚が食べられてビールがさらに美味しく飲めました。抽選会も盛り上がり、次回も楽しみにしております。」
塩見さん
「ちょっと遅れての参加になりましたが、ラッキードローは1等が当たりました! 美味しいお料理と暖かい雰囲気の中で楽しい時間を過ごすことが出来ました。運営に携われた皆様に感謝です。」


10月1日(水)にはぐくみ会が開催され、20名のお子様のご参加がありました。
この日のテーマは「ハロウィン」で、仮装して参加するお子様もおられ、保護者の方と写真撮影を楽しんでおられました。また、ボランティアさん手作りの「黒猫ボーリング」で上手にボールを転がしてピンを倒したり、「オバケ釣り」では釣り竿でオバケをたくさん釣って笑顔があふれていました。保護者の方々も話に花を咲かせておられ、にぎやかな雰囲気に終始しました。
オバケがたくさん釣れました
上手にボールを転がしました
苺とパイナップルに仮装
最後に絵本も読みました



☆今回も様々なプログラムを準備していますのでお楽しみに!☆
詳細は、ホームページやメール配信などでお知らせします。
AAJ からお知らせ <家庭訪問先募集>
マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース(AAJ)の学生をご家庭に訪問させていただけませんか?
マラヤ大学予備教育センター日本人教師団
団長 栗岡 誠司
AAJでは、日本の大学への留学を目指すマレーシア人(主にマレー系)の若者に予備教育を行っています。学生たちは、日本語を使っての日常会話にはほとんど支障ありませんが、日本の日常生活に関する情報が不足しています。そこで、学生が日本の文化・慣習への理解を深めることを目的として、毎年、日本人の家庭を訪問させて頂いております。例年、多くの在留邦人の皆様のご協力により、学生たちは貴重な体験ができ、大変感謝しております。
つきましては、本年度は下記の要領で家庭訪問を計画しておりますので、皆様へのご協力をお願い申し上げます。
● 訪問日時:2026年 1月24日 (土) 10:00~12:00
● 募集家庭:KLおよびその近郊にお住まいの邦人のご家庭 (15家庭程度)
● 訪問人数:1家庭あたり2~3名の学生が公共交通機関を利用して直接ご家庭に伺います。
● 申込方法:次の 1. 2. のいずれかの方法でお申し込みください。
- 日本人会ロビーにおいてある申込用紙に必要事項をご記入の上、日本人会受付へ提出
- E-mailにて送信【 送信先:aaj.pasum@gmail.com 】
「AAJ学生 家庭訪問受け入れ希望」と題し、(1) 氏名 (漢字、ローマ字) (2) 性別 (3) 住所 (4) 連絡先 (電話番号・E-mail ) (5) 受け入れ可能人数 (6) 家族構成 をご記入の上送信
● 申込締め切り:2025年 11月24日(月)必着
● 問合せ先:マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース (AAJ, PASUM, Universiti Malaya)
E-mail:aaj.pasum@gmail.com TEL:03-7967-5881 (総務部:原口/中嶋)
主催:マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース (AAJ)
協力:在マレーシア日本国大使館、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター、マレーシア日本人商工会議所、クアラルンプール日本人会、クアラルンプール日本人学校
♦過去の活動例
- 日本の観光地、学生の留学予定地域、出身地などの紹介
(写真や日本地図を使用) - 日本の文化、遊びの紹介
(浴衣、書道、茶道、福笑い、将棋、かるた、すごろく、折り紙、百人一首、お手玉など) - 日本食 (ハラル) の調理体験や試食
(手巻きずし、お好み焼き、納豆、うめぼし、おむすび、おもち、団子など)
♦訪問させていただいた日本人家庭からの感想
- 日本とマレーシアの架け橋となるであろう学生さんたちと関わりを続けていきたいと思います。
- この交流会を通して、私たち家族も宗教や文化の違いなどを体験し学ぶことがたくさんあり、大変有意義な時間でした。
- 学生さんは日本語がとてもじょうずでした。理解力、素早い判断力、文字もきれいに書いてくれました。



えっ!マレーシア <野鳥シリーズ③身近な公園>
🐤 カラフルできれいな鳥たち
一年を通じて、きれいでかわいい鳥たちが見られる。ひょうきんな顔の鳥もいて楽しい。
ルリノドハチクイ
Blue-throated bee-eater
瑠璃喉蜂喰
スズメよりも一回り大きい。頭が茶色、のどが水色で、背中は緑。ハチクイの名前の通り、飛んでいる昆虫をつかまえて食べる(写真はKLCC公園)
オナガダルマインコ
Long-tailed parakeet
尾長達磨鸚哥
体の大きさは40cmくらい。顔が赤く、喉が黒い。体は緑。大きな木に2~3羽が一緒にいる(写真は天后宮駐車場)
シロボシオオゴシキドリ
Lineated Barbet
白星大五色鳥
※動画はカマキリを食べている。苦手な人は閲覧注意。
スズメより少し大きい。高い木にいて、木の実や昆虫を食べる。頭が白っぽくて、羽根が緑。目の周りが黄色で、ひょうきんな顔に見える(写真はTaman Rimba Kiara)
ムネアカゴシキドリ
Coppersmith Barbet
胸赤五色鳥
スズメと同じくらいの大きさ。高い木にいて、木の実や昆虫を食べる。頭と背中が緑で、腹は緑のまだら。ひたいが赤くて、目の周りが白と黒でかわいい(写真はKLレイクガーデン)
🐤 やっぱり猛禽類
他の動物をつかまえて食べる鳥を猛禽類と言う。ワシやタカなどで、鳥の食物連鎖の頂点になる。もともと数が少ないので、見られる機会は希少。
シロガシラトビ
Brahminy Kite
白頭鳶
体の大きさは45cmくらい。ランカウィ島の石像で有名。頭が白くて、羽根は茶色(写真はKLレイクガーデン)。海に急降下して魚をつかまえたり、カニやカエルなどを食べている。
カンムリオオタカ
Crested Goshawk
冠大鷹
体の大きさは40cmくらい。頭と背中は茶色で、腹に横じまがある。KLCC公園で子育てをしていたことがある。KLレイクガーデンなどでも見られる(写真はKLCC公園)
カンムリワシ
Crested Serpent-eagle
冠鷲
※動画はヘビを食べている。苦手な人は閲覧注意
体の大きさは50cmくらい。頭と体が茶色で、目の周りが黄色(写真はFederal Hill)。日本では沖縄にいる
モモグロヒメハヤブサ
White-fronted Falconet
体の長さが15cmくらいで小さい。頭と背中は黒い。顔がパンダのように見えて、とてもかわいい(写真は天后宮駐車場)
🕊 キツツキに出会えるかも
マレーシアには日本よりもキツツキの種類が多い。木の表面の虫を食べて、木に穴をあけない「キツツキ」もいる。
🕊 カラスに子育てしてもらう!
オニカッコウは、日本のカッコウCommon cuckoo郭公のように托卵する。カラスなどの巣に卵を産んで、育ててもらう。
オニカッコウ Asian Koel 鬼郭公
40cmくらいで、マレーシアのカラスと同じくらいの大きさ(マレーシアのカラスはイエガラス House Crow 家鴉 と言って、日本のカラスよりも一回り小さい)。オスは真っ黒、メスや未成鳥は茶色のまだらで、くちばしが黒ではなく目が赤い。大きな木で、大きな声でよく鳴いている(写真は天后宮周辺)
木にいる鳥を探す時は、枝の先や、木の葉がついていない枝を見てみてみよう。鳥がとまっていることがある。次に、枝や葉が動いているところを見る。木の中に鳥がいることがあり、ずっと見ていると、中から鳥が出てくることがある。花の咲いている木、鳥が食べられるくらいの小さな実がなっている木は、鳥が集まりやすい。鳴き声が聞こえたら、どこから聞こえるのか探してみよう。
また、鳥は地面にもいる。動いているものがないか探してみて、草が動いていたら、中から鳥が出てくるかもしれない。
鳥は、もちろん空にもいる。大空を舞っている鳥を見ることができる。飛んでいる鳥の種類を見分けるのは難しいが、大きな鳥が飛んでいる姿を見るだけでもすばらしい。ぜひ楽しんでください。(大橋美幸)
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